警部「・・・という状態です」
ルナ「・・・なるほど」
あれから10分後、ルナは当然のようにスコットランドヤード、ロンドン警視庁のなかの椅子に座っていた。ルナは説明を聞いてなるほど、とうなずいたがこの事件の今までのいきさつをただ長々と話していただけで何か得るものでもあったのだろうか
警部「そしてこれが犯人からかかって来た電話です」
犯人「・・・・ドルを・・・日4時までに・・・・に」
ルナ「!・・・もう一度再生してください」
警部「・・・はい」
犯人「・・・にもってこい・・」
ルナ「いま、犯人の後ろで声が聞こえた気がする」
警部「え?!」
警部が急いでもう一度再生する
「までに・・・・。。。・・に・・」
警部「本当だ!」
ルナ「・・・・どこからかけてきたかは分かりますか?」
警部「いや・・・ロンドンのどこからかとしか・・・」
ルナ「・・・・もう一度再生してください」
犯人「ガガガ・・・ルをもって午・・・・でに・・」
ルナ「・・・ほむはぶかがかにえすてーずくつんちくみるたけ」
ワイミー「??」
警部「は?・・・」
ルナ「よく聞いてください。後ろで聞こえる声、そう聞こえます。ほむはぶかがかにえすてーずくつんちくみるたけ、です」
そりゃあとつぜんそんな意味不明な言葉を発せられれば誰だって驚くだろう。これはルナが、じきに名探偵になるための第一段階である。最初の事件、どのように解くのか。
警部「・・・・・・確かにそう聞こえなこともないが・・・意味が分からないぞ」
ルナ「そりゃあ、意味のある・・たとえば監禁されてる場所とかを言ったら今頃どうなっているか分かるでしょう・・・もしかしたらこれはメッセージなのかもしれません」
警部「メッセージ・・・?」
ルナ「はい。監禁されたのは偶然にも全員孤児なのでしょう?まあ、ロンドンは人が多いですから、孤児で、夜中にその辺をうろついてるような子供しかさらえないのでしょうけど・・・」
警部「・・・それが・・・?」
ルナ「住む家がなく、当てもなく暮らしている人間は必死で生き延びようとしますからね。危機に陥った時には通常の人よりも冷静になれる・・・。だからむやみやたらに意味不明な言葉を発した、というよりはなにかメッセージである可能性のほうが高いということです」
まるで昔を懐かしむかのように言った。警部は、お前は大人か!と突っ込みを入れたくもなったが、こらえた。
警部「・・・なるほど・・。しかしそうなると、何を伝えようとしているのだろう・・・」
ルナ「決まってるじゃないですか。犯人の特長とか監禁されている場所が分かるようなヒントですよ」
警部「・・・」
ルナ(メッセージ・・・そうは言ったが一体どのように解釈すればいいのか・・・
ほむはぶかがかにえすてーずくつんちくみるたけ・・・だったな。別の国の言葉だろうか・・・いや、私の知る限りそんな言葉はない・・・。それなら・・・暗号・・・?)
警部(・・・いままでぜんぜん進展していなかった捜査が一気に・・・もしこの子がメッセージの意味まで解いてくれれば事件は・・・)
ルナは探偵ものが割りと好きで暗号などには詳しかった。あのホームズの踊る人形の、人形とローマ字の組み合わせもすべて記憶しているそうだ。その頃ワイミーはこんなことを考えていた。
ワイミー(人が誘拐されているのにこんなことを考えてはいけないかもしれませんが・・・ルナ・・・院でもそうだったが何か難解なパズルのようなものを解いているときが一番生き生きしている・・・そして今も・・・)
そう。ルナが何かに一生懸命に取り組んでいるのを見るのは久しぶりなのだ。院でソルと競っていた時も、イギリスに来てテニスに打ち込んだときも、がんばってはいるがワイミーにはあまり覇気が感じられなかったのである。それをこんな一生懸命に取り組んでいるのだからルナの親に等しいワイミーにとってこんなにうれしい思いをしたのは久しぶりだっただろう。
ルナ(まずこれが転置式なのか換字式なのかそれ以外なのかによって解き方は大きく変わってくる・・・
第一、今回の場合はメッセージを隠そうとしている暗号ではない・・・警察にメッセージを伝えるための暗号なのだから犯人が聞いてて分からなければごく簡単でいい・・・
単純な暗号なはずだ・・・となるとこれだけの文字列が並んでいながらその言葉を別の言葉に置き換えたりするだろうか・・・そうなると難しくなる・・・やはり転置式か・・・となれば単純な暗号ということであればおそらく・・・)
ルナ「・・・・解けました・・・」
警部「え?!」
ワイミー「!!」
ルナ「これは暗号になっていました。『ほむはぶかがかにえすてーずくつんちくみるたけ』これは転置式の暗号で、まずこの文章を半分のところで区切ります。」
紙に書いていく
『ほむはぶかがかにえすて ーずくつんちくみるたけ』
ルナ「分かりやすく2行にします」
『ほむはぶかがかにえすて
ーずくつんちくみるたけ』
ルナ「そして上の行と下の行を交互に読んでいきます」
『ほーむずはくぶつかんがちかくにみえるたすけて』
『ホームズ博物館が近くに見える。助けて』
ルナ「こうなります。つまり、ホームズ博物館周辺に監禁されていることになります。が、おそらくその窓ガラスか何かは密閉されていて、さらにそこに近寄れない状態であることが考えられます。あいていれば叫んだり、いろいろ方法はあるでしょうし、しまっていても近寄れればガラスを割ってなにかできるでしょう。それができないのは縛られて動きが封じられているということです」
警部「・・・・よし!!みんな来てくれ!!A班は私と一緒に・・・・・」
ワイミー「さすがですね」
ルナ「はい」
ワイミー「・・・・」
遠慮がないところがルナらしい
ルナ「警部」
警部「はい?」
もう警部と呼び捨てだ
ルナ「私もいきます」
警部「・・・」
ルナ「・・・というより、連れて行ってください」
警部「・・・いいだろう。今回の事件は何から何まであんたのおかげだった。最後も自分で飾りたいんだろう」
ルナ「違います。もし私の推理が間違っていたり、何か想定外の事態が起きたときにすぐに次の指示を出すためです」
警部「・・・」
ルナ「では行きましょう」